【ゲーム開発】ソシャゲプランナーがバランス設計で気を付けているつもりのこと【開発ナレッジ】

こんにちは、涜(とく)です。

たまには真面目に専門分野の話をしてみます。

わたくし実はインゲームと呼ばれるゲームの遊びの部分を担当しています。

ゲーム開発上の企画職の作業としては花形であり、担当していてやりがいを感じる分野ではあるのですが、ゲームの出来と直結している以上プレッシャーのかかりやすいところでもあります。

私の関わっているようなソシャゲだと、作業のほとんどはキャラクター性能かステージの設計になると思います。基本的な遊びのシステムは開発初期に作りきってしまうので、開発期間中でも運営中でも多くの時間を性能の設計とデータ作成、バランス調整に費やします。

出来が酷いと炎上しますし、あまり無難すぎると喜ばれないし、出来が良くても悪くても売上低下の温床になる場合もあります。(まぁ燃えるほど有名ではないですが)

上記の通り売り切りでも難しいですがソシャゲだと別の難しさも伴う箇所だと思っています。

そんな担当を今まで何とかやってきた知見をここに共有できれば幸いです。


キャラクター性能を作る上で意識していること

まずは、あくまでゲームとして気にしていることについてです。

  1. ゲームのシステムを活かす設計になっているかどうか
  2. それぞれの性能のユニークさ
  3. システムが耐えうる限界を超えていないか

①ゲームのシステムを活かす設計になっているかどうか

これは当然できていないとマズいのですが、運営が長く続いたり、ユーザーが何らかシステム上の抜け穴を見つけたものに対して対処するような、応用的な対応が要る局面が訪れると見落とすことがあります。

また、ユーザーがゲームを初めて最初に触れるようなキャラクターの場合、これを強く意識して設計しなければなりません。

例えば、RPGならよくある、物理・魔法のような攻撃属性のあるシステムを、それらが如何にして戦闘上で影響をもたらすのかを、できるだけ説明なしで理解させる必要があります。

基本的にただ戦いを表現するのであれば、物理・魔法のように分けることなくただのダメージにしてしまえばよいです。しかし、わざわざ分けているならばこれらの価値の違いを示す必要があります。

あくまで私の持つ一番強いイメージですが、攻撃属性の違いというのは希少性の違いになることが多いと考えます。これはユーザーが所持する手持ちでの属性の偏りだったり、敵の持つ耐性の偏りだったりします。

もちろんこれらの偏りが場面によって非常に極端だったり、反転したり、均等だったり様々です。

それだけではなく、特殊な仕様が絡む場合もあります。以下のようなものとか。

  • 魔法は回避が不能で必中する。
  • 魔法の耐性による軽減が、物理と処理が異なる。
などなど。

これらの偏りや属性による仕様の違いを理解させるため、次のようなアプローチをしたりします。

  • ユーザーの手持ちになるであろうキャラの半分以上を物理攻撃・物理耐性に寄せる。
  • 最初に当たる強敵の必殺技だけ魔法攻撃にする。
ゲームによっていろいろあるかと思いますが、ユーザーに感覚で理解してもらえるような設計であることが重要です。

プレイしていて、

「何かこのキャラのダメージめっちゃ通るなー。」とか。

「あの敵の攻撃絶対避けれないなー。なんでだろ?」とか。

成功や失敗からこういうことを感じてもらって、「あれっ?これ魔法属性じゃん!」という気づきを作れているかどうかがこの作業の肝です。

とはいえ、なんとなくプレイしてて気づかない人や、逆に説明を片っ端から読んだり、検証したりする律儀なユーザーさんもいます。

なので、実際は体感4割のユーザーがこの設計で気づいてくれれば御の字かなというところです。


②それぞれの性能のユニークさ

ユニークとは「一意の」というようなニュアンスで、どれだけ唯一無二かということです。

もちろん唯一の性能のほうが喜ばれることが多いですし、良く見えると思います。
しかし、以下のような点から、何が何でも唯一だと難しいというのがあります。

  1. 運営が長くなるとネタが尽きる。あるいはシステム上それ以上拡張する意味がなくなる。
  2. ある性能に依存するような攻略が求められる場合、未所持ユーザーが攻略を投げる。
①は担当者の腕だったり、システムの許容する多様性次第だったりします。
インゲームシステムの拡張性が狭いとできることがあまりなく、担当者も新しい性能を設計することが難しくなります。

また、どうにか新しいものを作ろうとした結果、リスクリターンの激しい性能を作ったり、デメリットに対してトレードオフでないと感じられたり、ユーザーに使いづらいと嫌われるなどあまり素直に面白いと思ってもらえなかったりします。

※もちろん、つけたデメリットがある条件下でメリット化するなどのイメージが事前にあれば好感してもらえたりするので、上手くやれればそれは間違いではないと思います。


②はユーザー視点で非常にわかりやすい事象だと思います。

特に、初心者さんや無課金ユーザーさんが直面する"入手の難しい"キャラクターが唯一無二の性能をしていて、且つ直近の短期開催イベントでそれが有効だったりすると非常に苦しいと思います。

そういうことの救済措置として、似たようなことができる別のキャラや、同じタイプだけど違いのあるキャラを作る場合があります。運営の腕が悪いとただの下位互換と揶揄される場合もありますが、ないよりマシです。

※私は時間もアイデアもないとき、上司から「昔のキャラの下位互換で作って」と言われて、悔しい思いをしながら作ったことが忘れられません……。

これらの理由から必ずしもすべてが唯一であることは難しいのですが、それぞれの性能がただの上位互換、下位互換となってしまうと、我々以上にユーザーさんのモチベーションが湧かないはずです。ですので、できる限りユニークさを諦めないことが重要だと私は考えています。

根っこがゲームであるからこそ、キャラの魅力は絵と声とシナリオだけじゃないぞという意識で個人的にはやっています。


③システムが耐えうる限界を超えていないか

これはどういうことかというと、多くの場合ぶっ壊れ性能や特殊な性能への懸念です。

ここでの懸念は一強過ぎてどうしよう?というのよりは、技術上や仕様上大丈夫かというところです。

例えば、「攻撃速度が上昇する」みたいな効果があったとします。

この効果を元々攻撃速度が高いキャラに複数重ねてかけた時に、フレームレートを超えたりして不具合が出ないかとか。

またあるいは、「何か条件を満たすたび無敵になる」みたいな効果で一生無敵になる状態を意図的に作れてしまうとか。

その手の不都合が起きないかを気にするという面での懸念があります。


これに気づかずリリースすると対処が面倒になります。

不具合が出る場合は修正を、仕様バグの場合は仕様修正とその理由のユーザーへの開示及び必要に応じて補填・返金。加えて、当然ながらどちらの場合でもお詫びが必要です。

これらを未然に防ぐためには、その性能の設計段階でどのような状態になるかを想像しておく必要があります。その上で実装後速やかに懸念点の確認を済ませておくべきです。

こういうケースはQAでも引っかからないことが普通にあります。結局のところ仕様に一番詳しいのは担当している我々や実装担当者なので内々で問題点を抑えておかなければなりません。




運営上意識していること

次に運営サービスとして継続していく上で気にしていることを述べていこうと思います。

基本的に数年規模で運営するつもりでプロジェクトは動いているはずなので、できる限り長く続けても破綻の少ないよう続けたり、立て直しを図るために行われることに対してインゲーム側としてアプローチできることについての話です。

人が関わるものを継続して運営するという点で、経済的な視点が必要になってくるかもしれません。。まぁ経済の専門家でも何でもないのでほとんどたとえ話だと思ってほしいのですが。

  1. 需要と供給のバランス操作
  2. パワーインフレを許容するかどうか

①需要と供給のバランス操作

早速経済的ですが、非常に重要です。

アイテムのイメージが強いかもしれませんが、キャラクターこそ多くのソシャゲで一番重要な財産です。

キャラクターの提供は、攻略需要に対する供給です。つまり、性能設計担当として意識しておかなければならないのは、インゲームコンテンツの攻略になります。

よくあるタイプのゲームは以下のような需給サイクルでゲーム内経済を回しています。

「コンテンツ攻略需要←キャラ供給 = キャラ獲得・育成需要←アイテム供給 = アイテム需要←アイテム供給コンテンツ = コンテンツ攻略需要

そしてこれらを激しく意識させることで、ユーザーの活動を活発にして運営は収益を上げます。

では、ユーザーの活動を活発にするためにはどうしたらよいでしょうか?

私の考えるところの回答は、新たな需要を作ることです。

私見ではキャラクターは唯一長期的には無限の効用、ひいては需要を生む可能性を持つことができると私は考えますし、実際その役割が期待されていると思います。

理由は多様な面から回答できますが、性能に限って言えば攻略の幅を広げられることが挙げられます。

攻略の幅が生む需要は、「難しいから攻略できないかも」というユーザー懸念の払拭や、「すでに攻略できてるけど、このやり方は面白そう」というような攻略意識の再燃などがあります。もちろんコンテンツの拡張による助けを必要とする場合もあります。

多様な性能を持つキャラクターを輩出し続けることで、キャラクターの獲得・育成需要を膨らませ、それに必要なアイテム獲得の需要、それを提供するコンテンツの攻略需要につながり、ゲーム内経済を潤します。

また、ここでの攻略は対人コンテンツでも同様です。ただし、非対人コンテンツと比較して攻略幅拡張の面で厳しいものがあります。それは編成最適解の存在です。


攻略幅拡張の敵と負のスパイラル

編成最適解は、その通りのキャラクターを揃えればなかなか負けない、対人環境トップに君臨する編成のことです。もちろん非対人コンテンツでも最適解はありますが、攻略可能と判っていれば多少の遊びが許せます。しかし対人コンテンツで手を抜けばほとんどの場合敗北します。

そのため、対人コンテンツを含むソシャゲでは、編成最適解に組まれ得るキャラクターをメイン商品に据え置くことが多いです。加えて、編成最適解を組み換えさせ続けるように性能設計を求められることがほとんどです。

理由としては、「編成最適解はどうせすぐ見つかる」という風に思われていることと、「これが最適解です!」と分かりやすく宣伝したいからに尽きます。

上からのお達しがこのように下りてくるため逆らえないのですが、このやり方は私の望むところではありません。

上で示したように、編成最適解の存在は攻略幅の拡張を阻み、無限の可能性を持つ需要の広がりを狭め、ゆくゆくはゲーム内経済を冷え込ませます。

需要の一極集中が始まると、まずはキャラクター性能をインフレさせ、インスタント攻略需要に働きかけ、その次は攻略難易度のインフレが来るというサイクルが繰り返されます。

これが続き、限界を感じたユーザーはゲームを離れ、運営はサ終を告げて沈黙することになります。

本気でゲームを長生きさせたいのであれば、売り抜きするような運営ではなく、ユーザーを無理に引っ張らず、黙っていてもついていきたい運営を心がけるべきだと私は考えます。



②パワーインフレを許容するかどうか

上であまり許容したくないとは言いましたが、そうはいっても窮屈なときの強引な解決手段であるパワーインフレはソシャゲ運営である以上手放すのは難しいでしょう。

パワーインフレは今までのすべてを過去にするほど強烈な影響力を持っています。今までの需給、パワーバランス、攻略テクニック、それとユーザーを置いてきぼりにして、白紙に戻しゲーム内にパラダイムシフトをもたらします。

もちろん突然そんなことをすれば運営の信頼は揺らぎます。昔のことは水に流そうといっても仲直りの握手をできないのが運営とユーザーです。行き詰ったバランス調整を解消することはできますが、ユーザーを手放す可能性を持った諸刃の剣であることは間違いありません。

ただし、上手くやる方法はあります。

「N周年記念!新限定キャラ登場!」とか、「○○に潜在解放実装!」とか。見たことありません?

急にきてなんだそりゃ?って一瞬思われるも、人気キャラとかゲーム内でネームバリューのあるキャラが来たりしてその強さに狂喜乱舞するやつです。

多くのユーザーはその興奮に精神を委ね冷静さを欠き、未だ冷静な「バランス崩壊」の声を聞き流し、自らも運営の行う破壊と創造の片棒を担ぐ。こうなれば世論は運営の側に一気に傾きパワーインフレを運営どころかユーザーが許容することでしょう。

しかしこれは、運営の信頼がしっかり無いとここまで上手くはいきません。

また微妙なゲームのアレコレに巻き込まれ続けた屈強なユーザーを相手にする場合も上手くいきません。

ですので、上手くやるには条件がいくつかあります。

  1. 可能な限り多くのユーザーを集められる環境でリリースしていること。
  2. ユーザーに誠実な運営であると思ってもらうこと。
  3. 上手く運営する、もしくはしているように見せ続けること。
  4. 大手の看板に頼りすぎないこと。
私が思いつくのはこのあたりです。
とにかく、ユーザーからの厚い信頼を得続けなければ受け入れてもらうのは難しいと思います。

どうしてもやるとなった場合は、現状打破のためだけではなく、今後のためであるという意識をもってやらなければ、終わりが近くなってしまうかもしれません。

なるべく慎重にやってほしいというのが個人的な見解です。


おまけ:キャラクターらしさの強調

これは場合によるので、おまけ扱いです。

基本的にゲームであるなら「インゲームシステム→性能→キャラクリエイト」の順で作るべきなのですが、すでにあるキャラクターコンテンツなどのIPを利用する場合、そのキャラクター性を意識した性能をつけてあげると、ユーザー印象が非常に良いと思います。

せっかちなキャラだから攻撃頻度高くしてみようとか、小柄だから敵の攻撃が当たりにくくなるようにしてみようとか、シナリオでの逸話を性能に起こしてみようとか。

本当は逆に造るべきなのですが、案件次第でこういう遊びを入れるとファンを沸かせられるかもしれません。

もちろん許容可能なバランスは意識する前提ですが。


総括

そんなわけで、たまには真面目なバランスや性能設計の話でした。

読んでいただいているなら分かる通り、多くの運営がやりそうな方針と私の考えが不一致なところが多いです。

結果を出し続けなければという圧力が足元の利益に視線を向けさせるのは仕方のないことなのかもしれませんが、もっと将来を見ていないと歪な運営をしたツケがいずれ回ってくるはずです。

そうはいっても私の出来ることはユーザーに楽しんでもらえるような性能を提供し続けることです。まぁ上に反発して杭撃たれまくってますが。そんな中でも何とか目を盗んで私なりの面白さを出していきたいと思います。


それでは、どうかあなたのキャリアに悔いのなきよう。


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