【ゲーム開発】「リスクリターン」と「メリットデメリット」と「ベネフィットロス」の「トレードオフ」【開発ナレッジ】

こんにちは、涜(とく)です。

気まぐれすぎて永らく空けましたが、気が向いたので更新します。

今回は、一応私の専門分野だと勝手に思っているゲームデザイン関係の細かくてややこしい話でもしようかなと思います。意味わからんカタカナ語を乗り越えればちょっと賢くなった気分になれる程度だとご承知おきください。

取り上げるのは題目の通り、
「リスクリターン」と
「メリットデメリット」と
「ベネフィットロス」の違いを知って、
「トレードオフ」を作ろうね

という内容になります。

※「ベネフィットロス」は特に業界的な用語ではない勝手にでっち上げたザルな概念です。

前提として、今回紹介するものすべての共通点は「プレイヤーが取り得る選択のための材料」ということを念のため押さえておいてください。

似たり寄ったりで難解であろう概念について、相も変わらぬ適当さで説明していきますのでよろしくお願いします。

それでは本題。


「リスクリターン」

ある事象が潜在的に起きる可能性についての、ポジティブorネガティブを含んだ概念です。

コストとリターンではないの?と思うのであれば、「コスト&リスクVSリターン」と捉えたほうがいいです。

これは「コストを払って、リスクリターンのあるものを選ぶ」というよくある状況であり、コストはリスクと合わせて、リターンと比較する天秤に掛けられるみたいなイメージです。

この解釈の注意として、コストだけは可能性にグラデーションが無く、確実に失うことを留意してください。多くの場合コストを含むことになるので、実は単にリスクリターンというよりは「コスト&リスクVSリターン」と意識しておいた方が無難かもしれません。

良い設計では、双方とも高いもしくは低いなど、度合が揃っていてあべこべではないことが徹底されています。しかし、特定の方向性をプレイヤーに示したい場合は偏った作りにしておくのも手です。その場合は複数の選択肢の総体でバランスを取りましょう。

プレイヤーは高低差の激しい選択が並ぶほど選びやすく、そうでないものほど悩みます。

「ハイリスクハイリターンの選択とローリスクローリターンの選択が並んでいる状況」は高低差が激しいものと捉えてください。

特定の条件下でリスクを無視できるような状況を作って、「意外と平気なリスクかも」みたいにプレイヤーの気を乗せるのもありです。


「メリットデメリット」

手を付ければ確実に起きる事象の、ポジティブorネガティブを含んだ概念です。

勝負相手の存在や環境がもたらす事象自体がデメリットと捉えて、プレイヤーが持ちうる道具は基本的にメリットを得られるものだと考えられるかもしれませんが、ここではそういうものとしては扱いません。

勝負相手や環境等の存在は"試練"であるとして、その試練を超えるために取る選択にこそメリットデメリット両方が含まれると理解いただけると、たぶん考えを近づけられると思います。

良い設計では、「パっと見は片方だけに見えても、実はすべての択に両方が混在している」みたいなものが案外用意されています。もちろんメリットだけのものだったり、明らかに両方あるなぁというものは当然あります。

プレイヤーは落差の小さいものが並ぶほど選びやすく、大きいものほど悩みます。

ここでいう落差は、1つの選択肢に含まれるメリットデメリットの度合の差が小さいということで、無難な選択肢として選ぶことに悩まないだろうなという感じです。


「ベネフィットロス」

プレイ中の様々な事象における損得を示す概念です。

特に業界的な用語ではないですが、意識しておくといいかもしれないパラメーターだと勝手に思っています。

これは、ミクロには「パス&ミス」、マクロには「勝敗」と言い換えてもいいでしょう。

たくさんのベネフィットまたはロスがパス&ミスとして積み重なり、勝敗という結果を形成し、まとまったUXを成すというイメージです。

「色々あってこうなった」という実感そのものともいえるかもしれません。

リスクリターンの中で話した、コストという概念はロスではないのかということも考えられますが、コストを払う時点ではプレイヤーはその選択を受け入れている状態であり、リターンが返ってくればロスではなく、リターンとの交換に過ぎません。
もし、リターンが返ってこない状況になったとしたら、支払ったコストも当然返ってこないので、この時点でプレイヤーにとってロスとして確定するみたいな感じです。

良い設計では、損得度合いが段々と大きくなっていき、時折リセットがかかるサイクルが構築されています。

プレイヤーは直近の損得に対して度合が大きいor逆方向のものほど選びやすく、小さいものほど悩みます。

どういうことかというと、損も得も重ねれば慣れるので、損なら損、得なら得が連続する場合、次第に大きくなっていかないと、美味しいのかマズいのかよくわからなくなります。また、連続した損の次に得、連続した得の次に損が続くと新鮮味を感じて過大評価しがちです。その辺を意識すると、悩ませ過ぎてプレイがダレるのをなるべく減らせるようになるはずです。


そして、この3つを統合すると「プレイヤーはベネフィットロスを気にしながらリスクリターンとメリットデメリットを考えてにらめっこする」ということになります。そりゃあ悩むよね。

なので、悩ませたいか悩ませたくないかのグラデーションもこの3点の深みで調整する必要があります。

あっさりしたゲームは脊髄反射で選べるくらいわかりやすくした方が良いでしょうし、こってりしたゲームは何時間悩んだとてむしろ悩む過程が楽しいくらい良い意味での選びにくさがあった方が良いでしょう。


一旦これらが理解できると、次の呪文が分かるようになっているはずです。

  • リスクが確定するとロスになる
  • リターンが確定するとベネフィットになる
  • リスクの可能性を抱えたりロスするのはデメリット
  • リターンの可能性を得たりやベネフィットが得られないのもデメリット
  • リスクの可能性を抱えなかったりロスしないのはメリット
  • リターンの可能性を得たりやベネフィットが得られるのもメリット
  • リスクリターンとメリットデメリットが直結するのは、リスクリターンの発生確率がそれぞれ100%である場合
チェックが済んだ?ところで、次は調整方針の話をします。


「トレードオフ」とは

今回取り上げている概念はすべて、上下、左右、奥手前のように1軸2方向で示せるものです。トレードオフというのは、無条件下において各選択肢が持つ1軸に対するベクトルを合算すると0になるようバランスさせた状態みたいなものです。

砕けた言い方をすれば、「ズルでもゴミでもない真っ当で無難な選択を取った状態」とでも言えますかね。

このトレードオフを作っておくことが設計上まぁ重要です。

※以降、"トレードオフを維持する"という言い回しが出ますが、これはゲームデザインの中でキープし続けることを意味しているだけで、プレイ中の話ではありません。


「トレードオフ」であるために

上で挙げた3つの概念の説明の中で、良い設計(私見)について触れていますが、そこで挙げているような「各概念の性質を分かった上での望ましい調整」を実現し、そのゲームとしての基準を定めてそこから逸脱しないことがトレードオフを維持する上で必要なことです。

先ほどの軸やベクトルの例でいえば、実は軸の原点はいくらでも移動できてしまいます。

なので、このゲームとしてはここだ!という原点を定めないと始まりません。

つまり、「これがトレードオフな状態である」というルールを作って、以降新たに追加するものではそのルールを遵守し続けることで、一貫してフェアな選択肢を作れるはずです。


"面白く"あるために

今までいろんな概念があって、トレードオフでバランスさせるとまともになるぞという感じの話をしてきましたが、これはあくまで前提であってゲームデザイン最大の目的である面白さにはこれらだけではたどり着けません。しかし、トレードオフは面白さを支える縁の下の力持ちです。

トレードオフが実現されている状態は"静"の状態であり、面白く感じる状態は"動"です。

つまり、勝負相手や環境などの外的要因によって均衡が崩され、それに対処するということで、状況の拮抗を有利に動かしていくことにカタルシスが得られるはずです。

天秤の例に則れば、無条件下では天秤に傾きが無い状態が好ましく、状況によって天秤が傾き、プレイヤーは自分の有利さ加減が重くなる方を選び続けようとするという環境こそが理想です。

そしてこの均衡の崩れを存分に楽しむためには、均衡そのものがあることが前提です。これこそフラットなトレードオフを守った状態であり、この前提が維持されるように努めねばなりません。

上で無条件下だのベクトルが0だのバランスだの言及していたのは、それらが自体が美しく破壊されるためのお膳立てというわけです。これが徹底されることで「プレイヤーは真っ当な選択肢を選んで、フェアな勝負をする。たまにズルをする」という構図ができます。

もし今まで見聞きしたゲームの中にコンセプトは良いと感じても、、実際遊ぶといまいちだと感じたものがあれば、トレードオフが作れずにいて、いわゆる「バランスの悪い」ゲームになっている可能性があります。

チュートリアルや序盤攻略においてプレイヤーに有利な側に崩しておくのは勿論アリですが、いつかどこかには必ずトレードオフが訪れる状況を作らないと面白くないまま終わってしまうと思います。

バランスの良い面白いゲームであるためにも、トレードオフを作り維持できるようにしておくとよいでしょう。


総括

そんなわけで、重要かもしれないカタカナ語の話でした。

この辺りの概念はあまり口にすることもないですし、現場で言及があっても明確な答えを示しにくい内容だと思うので、少しでも言語化しておくのが良いと思って書いてみました。

とはいえ、大抵悪さをするのは正解を決めないで見切り発車してしまうことなので、方針を約束することさえ抑えておけばそれなりになります。

後は、ある程度固まるまでは一人で作り上げてみて、それから人の意見を聞いてみることでしょうか。ある程度は1人や少人数で作らないと、思想が先鋭化されないせいで独創性が無くなるし、人の意見を聞かなすぎると離れすぎてしまうので、こういう順番で調整掛けていくのが無難だと思います。まぁ聞く人がいなかったり、投げ掛けても応えてくれなかったりすると結局ソロなんですがね。

それはともかく、ただでさえ面倒がられるゲームデザインの中でもややこしいし、何なら解説しても人を置いていきがちなコイツらですが、上手く付き合えばプレイヤーをゲーム中毒にできます。そんな彼らにちょっとでも興味が湧くと私も浮かばれますので、ぜひゲームデザインに挑戦してプレイヤーに揺さぶりをかけてみてください。


それでは、どうかあなたのキャリアに悔いのなきよう。

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